2012年4月21日土曜日

Portable Document Format - Wikipedia


Portable Document Format (ポータブル・ドキュメント・フォーマット、略称PDF) は、アドビシステムズが開発および提唱する、電子上の文書に関するファイルフォーマットである。1993年に発売されたAdobe Acrobatで採用された。

特定の環境に左右されずに全ての環境でほぼ同様の状態で文章や画像等を閲覧できる特性を持っており、2008年7月には国際標準化機構によってISO 32000-1として標準化された[1]

PDFのドキュメントは1以上のページで構成され、各ページにはテキスト・画像・図形が含まれる。

PDFの特長は、作成したドキュメントを異なる環境のコンピュータで元のレイアウトどおりに表示・印刷できることである。そのため、印刷物と同じレイアウトの電子ドキュメントを公開するためにPDFは利用される。また、DTPの過程でPDFファイルを作成・利用する場合も多くなっている。

PDFファイルは、Adobe Acrobatを使うことで印刷可能なあらゆるドキュメントから生成できる。また、Webサーバなど、サーバサイドでPDFを作成するためのライブラリ類も多数ある。

PDFファイルの表示や印刷は、アドビシステムズが無料で配布しているAdobe Reader(旧Acrobat Reader)などでできる。Adobe Readerなどがインストールされた環境であれば、一般のHTMLファイルと同様にWebブラウザ上でPDFファイルを閲覧できるが、Adobe Readerの起動のために表示に時間がかかることがある。

PDFの仕様はアドビシステムズから公開されている[2]。そのためもあり、アドビシステムズ以外でもさまざまな企業や団体がPDF関連のソフトウェアを開発・公開している。オープンソースソフトウェア、フリーウェアも数多い。

[編集] PDFの特長

PDFには、次の特長がある。

  • 作成したドキュメントを異なる環境のコンピュータで元のレイアウトどおりに表示・印刷できる
  • ドキュメントのセキュリティを設定できる
  • 圧縮してデータを格納し、ファイルサイズを小さくできる
  • しおり・リンク・コメント・注釈といった、ドキュメントを画面に表示するときに便利な機能を設定できる
  • フォーム機能を使って、利用者の入力欄を受け取るような書式設定済み文書を作成できる
  • 音声化などアクセシビリティに配慮したドキュメントを作成できる
  • マルチメディアに対応している

[編集] レイアウトの保持

PDFのドキュメントは、Adobe Readerがインストールされているコンピュータであれば元のレイアウトどおりに表示・印刷できる。Adobe ReaderはWindows・Mac OS X・Linuxなど各種オペレーティングシステム (OS) に対応したものが無償で配布されており、他のPDF閲覧ソフトも数多く存在するため、PDFファイルは多くの環境で閲覧・印刷できる。

PDF以外の電子ドキュメントは、ほかのコンピュータ上で元のレイアウトを保持したまま表示・印刷するのは難しい。例えば、WordやExcelなどMicrosoft Officeのドキュメントは、対応するソフトウェアもしくは無料のビューワーをインストールすれば閲覧することは可能だが、バージョンや設定が違っていたり、フォントの有無が原因でレイアウトを保てない場合がある。HTML のドキュメントは多くのコンピュータで閲覧できる。しかし、レイアウトの制限が大きい上、OSやWebブラウザの種類・設定でレイアウトが変わりやすい。

そのため、レイアウトの保持が必要なドキュメントはPDF化することが多い。ただしフォントの設定によっては、PDFでも元のレイアウトを保持できない場合がある。この問題は、フォントを埋め込むことで回避できる。

[編集] フォントの埋め込み

電子ドキュメントを正しく表示するためには、フォントが正しく設定されている必要がある。一般に、ドキュメント作成時に使用されているフォントがインストールされていないコンピュータでは、ドキュメントを正しく表示・印刷できない。例えばヒラギノフォントを使って作成したドキュメントは、このフォントがインストールされていないコンピュータでは代替の日本語フォントで表示する必要がある。さらに、日本語フォントがインストールされていないコンピュータではエラーや文字化けが発生し、正しく表示できない。

PDFのドキュメントでは、使用しているフォントを埋め込むことで、そのフォントがインストールされていないコンピュータでも正しく表示・印刷できる。フォントを埋め込む方法は2つあり、当該フォントに含まれているすべてのグリフ(字形)を埋め込む方法と、文章に使用されているグリフのみを埋め込む方法である。これらの選択は、PDFを作成する際に行う。フォントを埋め込んで作成したPDFの日本語ドキュメントは、日本語フォントがインストールされていないコンピュータでも正しく表示できる。

ただし、フォントを埋め込んだ PDF ファイルはファイルサイズが大きくなるという問題がある。また、フォントを埋め込む場合は、フォントのライセンスにも注意する必要がある。

[編集] セキュリティの設定

PDFファイルには、情報の機密性を保つために、閲覧パスワード(ユーザパスワード)と編集パスワード(オーナーパスワード)を設定することができる。

閲覧パスワードが設定されていると、利用者は正しい閲覧パスワードを入力しないとPDFファイルを開けない。編集パスワードが設定されていると、PDFを閲覧するだけならパスワード入力は不要であるが、次の作業をするには正しい編集パスワードを入力して設定を解除しなければならない。

  • 編集
  • 印刷
  • テキストや画像などのコピー

この機能を使うことにより、ユーザの画面上では表示できるものの、コンテンツ内の文章をコピー・アンド・ペーストできないようしたり、文書内の写真の印刷ができないよう設定した文書を配布したりできる。


どのように私は*に*。 QRPファイルを変換することができます。 docファイルですか?

また、電子署名を付け、ドキュメントの改竄を防止する機能も持つ。

[編集] マルチメディアへの対応

PDFファイルには、音楽、動画などのマルチメディアファイルを含めることができる。 そのためPDFファイルは、コンピュータを使ったプレゼンテーション用に使うこともできる。

また、2005年、アドビシステムズがFlashの開発・推進を進めてきたマクロメディアを買収しており、それ以降アドビシステムズによるFlashとPDFの統合が進められている。

[編集] PDFファイルの表示と印刷

Windows環境におけるPDFファイルの表示や印刷には、アドビシステムズから無料で配布されているAdobe Readerを使うのが一般的である。Acrobatがインストールされている場合は、AcrobatでPDFの表示や印刷ができる。Mac OS XではOSに標準で付属する「プレビュー」を利用できる。その他のOSについても、PDF閲覧ソフトに付属している印刷機能や、OSの印刷機能を利用して印刷できる場合が多い。

[編集] PDFファイルの検索

Web上のPDFファイルは、Googleなどで検索できる。また、コンピュータ内のPDFファイルは、AcrobatとAdobe Readerによる全文検索が可能だが、検索用インデックスを作成した高速全文検索を利用するためにはAcrobatのProfessionalバージョン(6.0以降)やGoogleデスクトップ、Mac OS X Tiger以降に付属するSpotlightなどが必要となる。

[編集] PDFファイルの作成

PDFファイルの作成には、アドビシステムズのAcrobatを利用するのが一般的である。Mac OS Xでは、OSの標準機能で各種ドキュメントをPDFファイルに変換できる。LinuxなどUnix系OSの印刷システムであるCommon Unix Printing SystemにはPDFファイルの出力機能がある。そのほかにも、後述するOpenOffice.orgなどオープンソースのものも含めて、数多くのPDF作成ツールがある[3][4]

[編集] Acrobat

Acrobatでは、データを各種ソフトウェアから「Adobe PDFプリンタ」へ印刷することでPDFファイルを作成できる。この操作の場合、Acrobatに含まれるDistillerでPDFファイルを作成することになる。また、Microsoft OfficeではAcrobatに含まれるPDFMakerでドキュメントをPDFに変換できる。PDFMakerはDistillerを呼び出すとともに、しおり・ハイパーリンク・注釈などを自動的に作成する。

Adobe PDFプリンタによる方法以外としては以下のような作成手法を備えている。

  • Acrobat から直接、単数もしくは複数の画像ファイルを指定して、PDF化することが出来る。市販のデジタル写真集などでも利用されている。
  • Web Capture機能によりウェブページを直接PDF変換する。階層を指定することでハイパーリンク構造も再現できる。
  • スキャナから直接画像を読み取り、PDFに変換できる。

[編集] PDFの歴史

出来事
1993年 アドビシステムズ、PDF1.0とAcrobat 1.0をリリース。
1994年 アドビシステムズ、Acrobat Readerの無償配布開始。この無償配布が、PDF普及の大きな要因となった。
1995年 アドビシステムズ、Netscape Navigator用のAcrobatプラグインを公開。Web上でのPDF利用を促進した。
1996年 アドビシステムズ、PDF 1.2とAcrobat 3.0をリリース。このバージョンからPDFとAcrobatが日本語に対応。
1999年 アップル、Mac OS Xをリリース。Quartzを採用し、OSレベルでPDFへ対応。
アドビシステムズ、PDF 1.3とAcrobat 4.0をリリース。
2001年 アドビシステムズ、PDF 1.4とAcrobat 5.0をリリース。
2003年 アドビシステムズ、PDF 1.5とAcrobat 6.0をリリース。
2004年 ソースネクスト、日本国内で「いきなりPDF」シリーズを発売開始。低価格のPDF作成ソフトということで注目を集めた。
アドビシステムズ、PDF 1.6とAcrobat 7.0をリリース。
2005年 アドビシステムズ、マクロメディアを買収。PDFとFlashの統合が開始された。
2006年 アドビシステムズ、PDF 1.7とAcrobat 8.0をリリース。
2008年7月2日 ISOの管理規格となる。ISO 32000-1。
2008年 アドビシステムズ、PDF 1.7, Adobe Extension Level 3とAcrobat 9.0をリリース。
2010年 アドビシステムズ、PDF 1.7, Adobe Extension Level 8とAcrobat X(10.0)をリリース。

[編集] PDFとPostScript

PDFは、アドビシステムズが開発し印刷業界の標準として普及していたページ記述言語 PostScriptを元に策定された。PDFでは、コンピュータ上でのデータ交換のために次の機能が追加されている。

  • ファイルに含まれる各ページへのランダムアクセスに対応。この機能により、必要なページをすばやく表示できる
  • フォントの埋め込み
  • 文書情報など、本文以外の情報を入力できる。PDFではしおり・リンク・注釈なども本文とは別の情報として扱われる
  • 透明の概念(後に追加)

PDFには、PostScriptの持っているプログラミング言語としての機能はなく、HTMLなどと同様のデータ記述言語となっている。これはファイルを開いた場合にエラーが発生する可能性を小さくし信頼性を高めるためという事と同時に、PostScriptが持つ特徴の一つである、インタープリタによる実行環境への依存性を極力排除していく方向性からである。


どうすればOutlook Expressを削除するには?

このように元々PDFはPostScriptから発展・派生したという経緯を持つため、PostScriptとPDFは似た特性を持っており、相互の変換は比較的容易である。実際、Acrobatに含まれるDistillerでは、各種アプリケーションのデータをいったんPostScriptファイルに変換(WindowsやMacintoshではプリンタドライバを経由する形で行われる)し、それを元にPDFを生成している。しかし、PDFを作成するには、必ずしもPostScriptを経由する必要はなく、例えばGDI経由で直接PDFを作成することも可能であり、実際にそういった形で動作(GDI→PDF)する製品は多数存在する(「いきなりPDF」もこのタイプである)。

[編集] PDFのバージョン

[編集] PDFの利用場面

[編集] 電子ドキュメントの公開・配布

[編集] 印刷物として制作したドキュメントのPDF化

Quark XPressやAdobe InDesignなどのDTPソフトウェアで組版した結果のデータは、しばしばPDFファイルとして出力される。こうして作成されたPDFファイルは、印刷物と同じレイアウトの電子ドキュメントとなる。一般に、PDFファイルの公開・配布は印刷物を配布するのに比べて低コストである。

そのためPDFを利用して例えば、カタログやパンフレットなどをインターネット上で公開したり、マニュアルや雑誌の収録記事をCD-ROMで配布することが多くなっている。

旧バージョンのQuark XPressなどからPDFファイルを作成するには、PostScriptファイルを生成したうえで"Distiller"というAdobe Acrobatに添付のソフトを使ってPDFファイルに変換するのが一般的である。また、Adobe InDesign、Illustrator、PhotoshopやQuark XPress(バージョン6以降)を使うと、Acrobatなどは使わずに直接PDFファイルを作成できる。

[編集] OfficeドキュメントのPDF化

Microsoft Officeや一太郎などで作成したドキュメントも、PDF化されることが多い。PDFのドキュメントは、Microsoft Officeなどドキュメント作成時に使ったソフトウェアをインストールしていないコンピュータでも表示・印刷でき、コンピュータの環境によってレイアウトが変わる可能性も小さくなる。

Microsoft OfficeのドキュメントはPDF化しなくても、マイクロソフトから無償配布されている表示専用ソフトウェア(Word ViewerやExcel Viewerなど)で表示させることができる。しかしこうしたソフトウェアは、Adobe ReaderなどのPDF表示用ソフトウェアと比べると、対応しているOSが限られていることもあり、インストールされていない、またはできない場合が多い。そのため、不特定多数の人を対象にしたドキュメントはPDF化することで正しく表示される可能性が高くなる。

PDFの作成には、Microsoft Officeからはプリンタとしてインストールされる「Adobe PDF」や「Acrobat Distiller」を利用してPDFを作成することができる。なお、32bit版Officeについては、Acrobatに含まれるマクロの「PDF Maker」を利用し、より簡単なPDFの作成が可能になっている。

2007 Microsoft Office System (Microsoft Office 2007)では追加アドインを加えることでPDFを出力する機能が追加された。また、Microsoft Office 2007 サービスパック 2 では標準機能として追加され、別アプリを利用することなしにPDFを作成することができる。このPDF作成機能は Microsoft Office 2010 (x86 / x64)にも引き継がれている。

また一太郎の「2011 創」以降のバージョンでは、一太郎文書から直接PDFを作成することもできる。

フリーソフトウェアのOpenOffice.orgとLibreOfficeでは、標準でPDF出力機能を備えている。

[編集] LaTeXとPDF

LaTeXで作成したドキュメントをPDFに変換する機能も持つツールも開発されている。

  • PDFLaTeXはLaTeXソース文書を読み取り、そのままPDF形式に出力できる(日本語を含んだLaTeXソース文書は扱えない)。
  • dvipdfm(x)はLaTeX標準の中間形式であるdvi形式のファイルをPDFに変換できる。
  • これらPDFを直接扱う方法ではなく、LaTeX標準のdvipskなどの伝統的なPostScript出力用ツールでいったんPostScript形式に落とし、それをAdobe Distiller(またはフリーソフトであるGhostscript)といった標準的なPostScript→PDF変換ツールを使ってPDF出力させるといったやり方も一般的である
  • ProsperなどのLaTeX形式ファイルからプレゼンテーション用PDFファイルを生成できるツールも存在する。

[編集] XMLドキュメントのPDF化

マークアップ言語XMLの応用技術であるXSL-FOを利用すると、Apache FOPやXSL Formatterなどのソフトウェアを利用してPDFファイルに変換できる。XSL-FOはXSLTなどを利用して各種XMLドキュメントから生成できるため、XSL-FOを利用することで各種XMLドキュメントからPDFファイルを作成できる。

[編集] 紙資料のPDF化

紙資料をイメージスキャナなどを使って電子ドキュメントにする場合も、PDFが利用されることが多い。

紙資料を電子ドキュメント化するとき、PDFを利用しない場合には、TIFFなどの画像ファイルとして保存する方法と、OCRソフトウェアを使ってテキストとして保存する方法がある。画像ファイルとして保存された電子ドキュメントは画面上で見る場合には紙資料と同じ内容が再現できるものの、文章や文字をコピーすることができないなどテキストの再利用に大きな制限がある。また、OCRソフトウェアを使って作成したテキストファイルではテキストの再利用は可能となるが、OCRソフトウェアの精度の問題もあり、元の内容を完全に再現できない場合が多い。


ISOを結合する方法

PDFを利用すれば、紙資料をスキャンした画像の上にOCRソフトウェアで変換して作成した透明テキストを重ね、1つのファイルとして保存することができる。こうしたPDFのドキュメントでは、画面上で見る場合には紙資料の内容を完全に再現でき、不完全ではあるがテキストの再利用もできる。例えば、Acrobatにはバージョン6.0以降のStandard版以上でOCR機能が標準で搭載されるようになった。

[編集] PDF入稿

印刷物制作時の入稿をPDFですることも増えてきている。従来は、QuarkXPressなどで組版した結果のデータをそのまま入稿することが多かった。

PDF入稿には、

  • 原稿作成方法の制限が小さくなる
  • 画像ファイルの添付し忘れやエラーの発生を少なくできる
  • データサイズをコンパクトにすることができる

などといった利点がある。

ただし作成方法によっては、商業印刷には使えないPDFファイルが生成されることもある。たとえば、紙資料をスキャンして作成したPDFファイルから商業印刷に要求される結果を得るのは難しい。目的とする印刷品質を得るためには、フォントの埋め込みや印刷時に使用する色の情報、画像解像度などをPDFファイル作成時に適切に設定する必要がある。この設定を行うにはコンピュータの操作方法ならびに印刷物とその製造工程を的確に理解していることが必須であるため、誰でも確実に行うことができるとは言い難い。PDF/Xは、こうした問題を回避するために用いられる[5]

[編集] PDFの短所

PDFの短所として、次のような点が指摘されている。

  • 仕様が複雑
  • ドキュメントを画面で見るには不向き
  • AdobeReaderなど一部のリーダの起動が遅い
  • 閲覧に使用したコンピュータをウイルスに感染させることができる

[編集] 仕様が複雑

PDFは、元にしていたPostScriptの仕様が複雑だったため、簡略化したとはいえやはり複雑な仕様になっていた。 また、PDFのバージョンアップとともにさまざまな機能が追加されたため、仕様はますます複雑になっている。

このため、PDFを扱うソフトウェアは巨大で動作の重いものになりがちである。例えば、Acrobat6ではソフトウェアのサイズが大きく、起動に時間がかかるなど動作が重いため、敬遠する人も多かった。Acrobat7になって起動時間は大幅に短縮したが、ソフトウェアのサイズは相変わらず大きく、動作の重さを感じる場面もある。

また、仕様が公開されているとはいえ、PDFの複雑な仕様に完全に対応するソフトウェアを作成するのは難しい。

[編集] 画面で見るには不向き

PDFは画面で見るには、ユーザビリティが不十分なために不向きであるとも言われている。

ドキュメントの読みやすさという点では、PDFを画面上で見るよりも印刷物の方が優れていると感じる人が多い。 但し、この視認性の問題についてはHTMLなどコンピューターの画面で見るフォーマット全てに言えることなので、PDFだけ取り立てて論ずるのは公平性を欠くであろう。 理由としては、

  • 人間の目は反射光を受け取って物体を視認する構造になっているが、コンピュータなどのディスプレイは直接光を出すため、それを受け止めると眼球に対する負担が印刷物に比べ大きくなり、目が疲れやすい。
  • ディスプレイに表示される物体は印刷物のそれに比べて解像度が低いため、寸法の小さいパーツは見えにくい。

といったことが考えられる。

ほとんどのPDF文書がA4縦長で作られているが、PC画面は横長であることが多く、A4縦長ドキュメントを等倍で表示させにくいという点も、画面で見るには不向きな理由の一つである。HTMLは、ブラウザがウィンドウのサイズに合わせて再整形するのでこのような問題は少ない。

ユーザビリティに十分配慮して作成されたHTMLドキュメントと比べると、PDFは扱いにくい面がある。PDFはWeb表示用に最適化(リニアライズ)されてないと、ドキュメントの一部分だけを参照したい場合でも、最初から最後まですべてのデータを閲覧端末に読み込む必要がある。Acrobatなど既定値でWeb最適化したPDFを作成するソフトも多いが、廉価・無償のPDF作成ソフトではWeb表示用に最適化する機能をもたないものがあり、このようなPDF作成ソフトで作成されたPDFをWeb上で表示するときには表示開始までの待ち時間が長くなりがちである。

ナビゲーションのために、しおり、PDFのページ間(内部)リンクやPDF外部へのリンクをドキュメントの任意の箇所に設定することも可能であるが、これはPDF作成時に素材データの中で設定するか、(Readerでない)Acrobatなどのしおり・リンク編集機能をもつソフトで追加する必要がある。この点は、ソースに参照したい箇所をテキスト情報として付記するだけで済むHTMLに比べれば煩雑な手間になりがちである。

アクセシビリティの観点からも、PDFではドキュメントの作成時にタグ付きPDFとしなければならない点などを考えると、HTMLや単純なテキスト形式の方が扱いやすいことも多い。

ユーザビリティに関して世界的に影響力を持つヤコブ・ニールセンはPDFについて、「オンラインの閲覧用に使ってはならない」と結論づけている[6]


[編集] 閲覧に使用したコンピュータをウイルスに感染させることができる

PDFはセキュリティ問題がまったく考慮されていない古い時代のフォーマットであるため、脆弱性のあるAdobe ReaderでPDFウイルスを開くと、JavaScriptコードが勝手に動き出してウイルスを実行。パソコンに感染させる。同時に、ダミーのPDFファイルを表示させて、ユーザーにウイルス感染を気付かせないようにする。その脆弱性を悪用した攻撃が続出しており、2009年12月以降、日本で話題になっている「ガンブラー」もPDFウイルスを媒介としている。

対策として、リーダの最新版へのプログラムアップデートがあるが、イタチごっこの状態となっており、 ユーザーによる不要な機能の無効化(例えばAcrobat ReaderにおけるJavaScriptエンジンの無効化)が推奨される。


[編集] 関連項目

[編集] PDFソフトウェアの一覧

[編集] PDFの関連規格

PDF/X 
PDFを元に策定された、印刷用途を目的としたファイル形式。印刷時のデータ交換をスムーズにするため、通常のPDFで使える機能を一部制限している。ISO15930として標準規格化されている。
PDF/A 
PDFを元に策定された、電子ドキュメントの長期保存を目的としたファイル形式。ISO19005として標準規格化されている。主に印刷目的として利用されていたPDFを、長期保存用に特化させたもの。PDF/Aは特に欧州を中心に使われており、対応するソフトウェアも欧州製のものが多い。現在、PDF/A-1(ISO19005-1)が主流だが、PDF/A-2もISOで策定中である。
PDF/E 
PDFを元に策定された、エンジニアリングワークフローにおける使用を目的としたファイル形式。ISO24517として標準規格化されている。知的権利の安全な配布やCADデータなどの複雑な3次元データなどをPDFに組み込むことを目標にしている。
PDF/H 
ISO未策定。ヘルスケアに関するデータを交換、保存するのを目的としたファイル。
PDF/UA 
ISO未策定。ユニバーサルアクセスへの対応を目的としたファイル形式。視力や運動能力に障害のある人にも利用できるように特化させたもの。
PDF/VT 
ISO未策定。可変データやトランザクション文書を扱うのを目的としたファイル。
PAdES 
ISO32000-2に含まれる予定。PDF文書の長期保管を目的としたPDFの拡張。欧州電気通信標準化機構(ETSI)により策定ならびに公開され、ISO32000-2に反映される予定。

[編集] PDFの競合規格

DocuWorks(XDW・XBD) 
富士ゼロックス製の、電子文書と紙文書を一元管理するオフィス向け文書管理アプリケーション。DocuWorks(6.0以降)のドキュメントからPDFの作成も標準(「Adobe Acrobat」または(Production Premium以外の)「Adobe Creative Suite」の入っているPCではそれを、入っていないPCには、6.xでは付属の「Acrobat Elements 7.0」を、7.xでは付属の「Adobe PDF Creation Add-On」をそれぞれ利用)でできる。競合規格という側面もあるが、共栄共存規格という側面も持ち合わせている。
FlashPaper 
Macromedia社が策定。PDFと同様に各種ドキュメントから「印刷」して作成でき、作成されたドキュメントはレイアウトを保持したまま表示・印刷できる。Macromedia社がAdobeに買収されたことで、CS3世代ではFlashPaperは作成できなくなり実質的にPDFに一本化された。
XML Paper Specification(XPS) 
マイクロソフトが策定し、Windows Vistaや次期Microsoft Officeで採用される印刷用のプラットフォーム。PDFとよく似た機能をもち、「PDFキラー」といわれている。
Scalable Vector Graphics(SVG) 
各種図形を表すファイル形式であるSVGは、PDFと同じくドキュメントのレイアウトを保持したまま表示・印刷する用途に利用できる。現状では、SVGが普及していないが、IE(8以前)を除いて、ほとんどのブラウザで利用できる。そうした中で、XSL FormatterはXMLドキュメントからPDFと同等のレイアウト結果をSVGで出力できる。
DjVu(デジャヴ) 
米国AT&T研究所が開発した、PDF同様にドキュメント公開用に使われるファイルフォーマット。特に画像データの圧縮率が高く、PDFやJPGよりもサイズが小さい割に画像の劣化が少ない特徴を持つとされ、2005年頃から一部で使用されはじめている。

[編集] 参考文献

  • 赤羽紀久生『PDFプロフェッショナルブック』玄光社、2007年8月。ISBN 978-4-7683-0250-7。
  • Professional DTP編集部『ビジネスで活用するAcrobat 7.0入門―用途に合ったPDFの「作成」「編集」「管理」』工学社、2005年1月。ISBN 4-7775-1098-0。
  • トップスタジオ『WindowsユーザーのためのPDF&Acrobat7.0入門』オーム社、2005年4月。ISBN 4-274-50020-9。
  • 大沢文孝『はじめてのAcrobat7.0―PDFファイルの「作り方」から「使い方」まで、詳しく解説!』工学社、2005年6月。ISBN 4-7775-1141-3。
  • 川上恭子『Acrobat7+PDFスパテク315 7/6対応』翔泳社、2006年1月。ISBN 4-7981-1016-7。
  • PDF研究会『PDFを使えば 業務文書はすべてうまくいく』技術評論社、2006年2月。ISBN 4-7741-2503-2。
  • 『PDF Hacks―文書作成、管理、活用のための達人テクニック』オライリー・ジャパン / オーム社、2005年3月。ISBN 4-87311-222-2。
  • 『PDFリファレンス第2版』アドビシステムズ / ピアソンエデュケーション、2001年9月。ISBN 4-89471-338-1。
  • トーマス・マーツ 著、広田健一郎 訳『PostScript & Acrobat/PDF』東京電機大学出版局、1998年11月。ISBN 4-501-52890-7。
  • トーマス・マーツ 著、広田健一郎 訳『インターネットのためのAcrobat/PDF―Acrobat4技術詳述』東京電機大学出版局、1998年11月。ISBN 4-501-53020-0。

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