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○棟居部会長 定刻になりましたので、これより、第11回障がい者制度改革推進会議差別禁止部会を開催させていただきます。
差別禁止部会は、一般傍聴者の方にも公開いたします。
また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときは、まず挙手いただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくり御発言いただくよう、お願いします。
本日の会議は18時までを予定しております。
それでは、東室長から、委員、オブザーバー、及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いします。
○東室長 どうもこんにちは。担当室の東です。
それでは、本日の出席状況ですが、本日は山崎委員、遠藤オブザーバーが御欠席でございます。その他の委員、オブザーバー、専門協力委員は御出席です。
本日の議事は、公共的施設及び交通施設の利用における差別禁止についてということであります。15分の休憩を2回取ることとして、3つのコーナーで議論していきます。
第1のコーナーは65分ほどを予定しております。
ここでは、2つのことを議論したいと思っていますが、まずは、差別禁止規定とバリアフリー化基準との関係についてであります。
次に、差別禁止規定を考える場合の対象となる施設の範囲に関して議論をいたします。
続きまして、第2コーナーですが、ここでは70分ほどを予定しておりまして、差別禁止に係る問題ですが、まずは、どのような行為が差別となるのかという点、次に、どのような場合に例外として正当化されるのかといった点についてであります。
第3コーナーは、この分野における合理的配慮として考慮すべき点、特筆すべき点があればということで議論をお願いしたいと思っています。
最後に、同じコーナーで、差別禁止部会における今後の課題ということで、各論的な分野をどうするかといったことについて御議論いただきたいと思っております。
以上が、今日の予定でありますが、次に、資料の確認をしたいと思います。
議事次第を見ていただければ、一応、資料番号と表題が書いてありますが、大きく分けると資料は2つございます。
資料1がバリアフリー法関係の資料でございます。資料の2が、差別禁止部会における今後の課題といったことについて書いたものです。
加えまして、委員の皆様から提出された資料がございます。1つが、池原委員、大谷委員、竹下委員、3名の方が出されたものです。
次に、太田委員、川内委員、永野専門協力委員が、それぞれ提出されておられます。
これに加えまして、当日配付資料として、引馬委員から「EUの公的施設及び公共交通機関の利用における差別禁止について」と題するものと、川島委員の方から、「第11回部会時点での私見と試案」という一枚物がございます。
続きまして、参考資料が7つほど挙がっております。
参考資料の1が、関係条例・法令の抜粋等でございます。
参考資料の2が「こころのバリアフリー」ガイドブック、参考資料の3が「知的障害、発達障害、精神障害のある方とコミュニケーションハンドブック」というものであります。
参考資料の4が「BEST交通事業者向けバリアフリー教育訓練プログラム」と題したものでございます。
参考資料の5が「障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査」ということで、抜粋が挙がっております。
参考資料の6が「バリアフリーの紛争事例」ということで、国土交通省調べという形で挙がっております。
参考資料の7が、会計検査院の報告の抜粋でありますが、バリアフリー関係の部分があります。
以上が、資料でございます。
以上、お手元に資料がございますでしょうか。御確認をください。
本日は、主に資料1、2、参考資料1を使いますので、御用意いただきたいと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、議事に入らせていただきます。
第1のコーナーは65分です。更に、それを今、お話がありましたように、前半と後半の2つに分けて進行いたします。前半の30分は、差別禁止規定とバリアフリー化基準との関係について、東室長から10分程度で説明をしていただいた後、20分程度で質疑、及び議論をします。資料1を御用意ください。
では、お願いします。
○東室長 担当室の東です。
公共交通とか建物に関しましては、御存じのように、日本では既にバリアフリー法として既存の法律があります。このバリアフリー法の部分と差別禁止でいえば合理的配慮の部分が一定の関係性を持っていると思っております。
そこで、差別禁止全体に係る問題ではありませんが、特に合理的配慮との関係で、最初に差別禁止法とバリアフリー法の関係について議論をいただきたいと思いまして、事前に私の方から説明をさせていただきます。
まず、資料の1をお開けください。
まず、1ページであります。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、いわゆるバリアフリー新法についての資料があります。
公共的施設や交通施設の利用分野では、バリアフリー施策を推進するために、御存じのように、従前のハートビル法と交通バリアフリー法を発展的に統合した新しいバリアフリー法が平成18年6月に制定されて、12月から施行されております。
このバリアフリー法では、交通施設や特定の道路、建築物などの新設や大規模改良等を行う場合に、その施設の所有者、管理者等に対して、移動等円滑化基準への適合が義務付けられているほか、既存の施設については基準適合への努力義務が課せられております。
また、国土交通省を中心に、国では啓発活動などを通じて、国民の高齢者、障害者等に対する理解や協力、バリアフリー化の促進に関する理解を深める心のバリアフリー、そういったものを実施しているとのことであります。
バリアフリー法の詳細を説明する前に、バリアフリー法とこの分野の差別禁止規定との関係について、簡単に申し上げたいと思っております。
バリアフリー法は、行政施策によって一般的にバリアフリー環境を底上げするというものであります。バリアフリー環境を底上げするということは、他の者との平等な機会を確保するという点で、1つの合理的配慮を提供しているといったことになるのではないかと思っております。
ただ、本来的には合理的配慮は個々の状況に応じて提供されるものという理解に立てば、バリアフリー環境の底上げは一定分野を限定して一律に提供されるものですので、その意味では最大公約数的に類型化された合理的配慮を提供しているといった言い方ができるのではないかと思っています。
このように、この分野におけるアクセスの確保といった面では、両者とも一定の共通の目的は持っておりますけれども、バリアフリー法は国と事業者の関係を規律するものであって、仮に違反があっても利用者が何か言えるといったような法的な構造にはなっておりません。
片や差別禁止法は、障害者と事業者との関係を規律するといったことが予定されているわけでして、そういった意味で法的な性格が異なっている。差別禁止法は、あくまでも権利というものを前提に、それをどう救済するかといった観点から議論されるべきものであるというふうに考えております。
したがいまして、一定の重なりはあるでしょうけれども、この違いというものを念頭に置いて混同しないように議論する必要があるのではないかと思っています。勿論、バリアフリー法に基づいた施策の推進という観点からすると、現行、バリアフリー法の問題点などもあるのかもしれませんが、この点については、国土交通省が行う施策の実施状況について、障害者政策委員会において基本計画の実施状況の監視という形で議論するということになると思います。
ですので、当差別禁止部会では、何が差別であるのかという観点と、どのような合理的配慮が提供されるべきか、そういう観点から差別禁止法をどう組み立てていくかといった辺りに議論を集中させていただきたいというふうに考えている次第であります。
それで、バリアフリー法の大枠のお話に移りたいと思います。
資料1の2ページ目を開けていただけませんでしょうか。
ここでは、表題に「ハード・ソフト双方の総合的な施策を展開するバリアフリー法」とあります。
バリアフリー法の最も大きな枠組みとしては、ハード面でのアクセスのみならず、例えば公共交通事業者に対して接遇を含む教育訓練が実施されていたり、国土交通省では公共交通機関、公共施設、商業施設の職員に向けたハンドブックを作成し、障害当事者の困難さを理解し、適切な接遇方法を紹介するなど、ソフト面でもカバーするといったものになっております。
次に、3ページをお開けください。
ここでは、バリアフリー法における対象施設の範囲や、この法律によって課される義務について整理してございます。
バリアフリー法は旅客施設及び車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物といった5つの分野を対象施設にしております。そして、それぞれの分野に沿った移動等円滑化基準といったものが設けてございます。その上で、この基準に適合させる義務を負う対象施設と、義務ではなく努力義務といったものにとどめられる対象施設が分けられております。
そこで、まず全体的に申しますと、既存の施設は一定規模の改修の場合を除いて、移動等円滑化基準に適合させるよう努める、いわゆる努力義務というものがかぶさります。適合義務というものが課されるものは、新設する場合や一定規模の改修を行う場合であって、分野によっては更に対象施設に施設の用途や大きさなどによって限定されたものにだけ義務が課せられる、そのような構造になっているかというふうに思います。
そこで、少し対象分野ごとに個別的に説明します。
まず、旅客施設及び車両等というところの部分です。
この部分につきましては、新設もしくは一定規模の改修の場合はそのすべてが適合義務の対象になっておりますけれども、それ以外の場合は努力義務ということになります。後ほど説明しますけれども、1日当たりの利用者数によって義務か努力義務かといった線引きがなされているわけではありません。
次に、道路ですけれども、道路につきましては、生活関連施設をつなぐ道路のうちで、高齢者や障害者の通行量が多いもの、これは特定道路と呼ばれているようでありますが、この特定道路を新設または一定規模の改修がなされる場合には基準への適合が義務付けられております。努力義務については、その他のすべての道路ということになります。
3番目の都市公園につきましては、公園の出入り口と休息所や標識などの公園の施設との間をつなぐ道路、これらは特定公園施設というふうに呼ばれておりますけれども、これを新設、増設、改築する場合には、基準への適合が義務付けられておりますが、既存の特定公園施設は努力義務にとどまっております。
最後に、建築物でありますが、これにつきましては、少し複雑であります。
これが義務か努力義務かという問題と、その対象の説明です。
なお、これらの施設の新築、既存のいずれを問わず、全体について一定の期限を付してバリアフリー化の目標が設定され、その目標を実現するための予算補助や税制等の支援が行われております。例えば、鉄道旅客でいえば、利用者数1日3,000人以上のすべての施設を平成32年度までに原則バリアフリー化するといったことが目標として掲げられているところであります。
このほか、建築物の移動円滑化につきましては、誘導基準というものもございまして、それに適合する特定建築物の建築や維持保全、その計画につきましては、認定制度がありまして、これを受けると容積率の特例を受けるなどのメリットなどがございます。
以上が、大体バリアフリー法の大枠です。
今、言いましたのは、基本的には物理的な面の基準の話なのですが、中には情報に関する部分もあります。バリアフリー関係資料の4ページ目を開けていただくと、「公共交通移動等円滑化基準の概要」ということで細かいものが書いてあります。この中で、例えば鉄道駅につきましては、点状ブロックを敷設することとか、トイレの男女別の構造を音とか点字等で示すこととか、乗車券販売所や案内所に筆談用具を設けることとか、その他、車両等につきましては、鉄道車両では車両番号等を文字及び点字で表示すること、バスや福祉タクシーでは筆談用具を設けることといった規定があります。
これらも基準の中に入ってはいるのですが、本部会では、情報は情報として別のくくりで議論するというふうに考えておりますので、これらの問題は今後、議論するということで、この点につきましては、今日、議論が出るでしょうけれども、別の機会で正面から議論する予定であるといったところを念頭に置いていただければと思っております。
ちょっと長くなりましたけれども、以上がバリアフリー法の説明です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、質疑及び議論に入らせていただきます。時間は20分を予定しています。どちらからでもどうぞ。
太田委員。
○太田委員 太田修平です。
今、室長からバリアフリー法についての説明を受けましたが、交通機関等々のトラブルは枚挙にいとまがありません。
これはなぜかといえば、本来、差別禁止というものがあって、バリアフリー施策が展開されるべきなのに、そういうのがなく、バリアフリー法という単体があるわけで、だれのためのバリアフリーかということが問われているわけです。基準適合とか特定建築物の考え方も事業者の発想で行われているわけで、障害者の権利を保障する法律が利用者ではなくて事業者の発想です。できる限り障害者の権利を確保しようというのではないから、いろいろなトラブル、乗車拒否とか、入店拒否とか、スロープを付けられるのにスロープを付けないお店があるというふうに考えます。まず、差別禁止というところを中心に据えて、バリアフリー法がその考え方のもとにつくられていくということが重要で、そのときに合理的配慮という概念が生� ��生きとしたものになるだろうと、つまり合理的配慮というのが、究極的には一人ひとりへの対応ということになりますが、まずは、差別をしてはいけない。だから、一定程度の設備をつくって、設備ではどうしようもないものについては知恵を出し、差別をしないという考え方がバリアフリーに求められているのだろうと思います。
それが、アメリカにおけるADAにおいてもそういう考え方は中核をなしていると思います。まず、バリアフリー法の施策の状況を議論することも大切ですが、それは差別禁止法の制定によって、改めて編み直していく性質のものであるということを訴えておきたいと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
ほか、御発言いかがでしょうか。
川内委員。
○川内委員 今、太田委員が差別をしてはいけないというふうにおっしゃっていましたが、ここで議論すべきは、何が差別かということだろうと思いますけれども、差別の定義は置いておくとして、利用者側が非常に不満に思っているのは、ほかの利用者、障害のない利用者に比べて、いろいろな予約とか何とかの手続が非常に時間がかかって、あるいは特別なやり方でないと取れないとか、あるいは駅なんかはワンルートアクセスということが言われていて、入り口が10か所あっても1か所アクセスを提供していれば合法になるというようなこと。
それから、列車なんかでも連絡なんかの関係ですごく待たされるとか、そういうふうなほかの乗客と異なる扱いを受けること。それから、介助者にばかり話をして当事者に話をしないとか、あるいは、これはあなたが乗ったら危険ですから乗せられませんというふうな抑圧的な扱いを受けてしまう。
あるいは判断能力がある人間として扱ってもらえないとか、あるいは、ホテルに宿泊したりするときに車いす対応室だと広い空間を取るというので割高料金を取られるとか、あるいは、旅行するにも介助者付きだったらば飛行機代が倍ないと乗れないとか、そういうふうな扱いを非常に不満と感じているわけで、その辺りを差別という区切りで区切っていただけるかどうかというのが1つあります。
それから、問題が起きたときにどこにも持っていくすべがない。つまり、これは権利をベースとしたものではなくて、ただただ鉄とコンクリートでこういうものをつくるんだということだけを言っているので、それに対して、移動は権利だとかというふうに言うと、国交省は、それは法務省の話であって、国交省がつくっているこの法律の話ではないというふうに今まで言ってきたわけです。その辺りをどう伝えるかというところを議論していただければというふうに思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
40分までを予定しておりまして、もうそんなに時間がございませんが、御発言いかがでしょうか。あるいは、先ほどの室長の説明で少し誤解とか行き違いがあれば補足を。
○東室長 いえいえ、別に誤解ではなくて、学校、職場は多数の者が利用するところで、特定建築物には入るでしょうけれども、学校一般が特別特定建築物には入っていないんですね。入っているのは特別支援学校などは入っておりますけれども、一般の地域の学校は入っていないということなのです。
今、太田委員、川内委員が言われたことは本当にそのとおりで、だからこそ、まずは障害者個人の権利保護といった観点から議論を行うべきだと思っています。バリアフリー法はバリアフリー法として存在するわけですけれども、まず差別禁止法というものに目を向けて、権利保護という観点から立法していくといった中で、太田委員、川内委員が言われたように、現在のバリアフリー法の問題点があれば、それは政策委員会等で果たしてそれが妥当なのかといった議論をしていくことが必要なのではなかろうかというふうに思っているところです。
○棟居部会長 ほか、御発言。
どうぞ。伊藤委員、お願いします。
済みません、大変失礼しました。そちらさまの副部会長でない方の伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員 初めて発言させていただきます。
余り専門的な見地からの発言はできないので、どれだけ説得力を持って発言できるか自信がないのですけれども、3ページのところで室長から御説明いただきました。今のバリアフリー法の規定では、特定道路、特定路外駐車場とか、特別特定建築物とかいう形で、規制の対象を一応限定するという枠組みになっているようですけれども、この考え方自体が、特定の施設についてのみ改修等の義務を事業者に負わせるということになると、逆に言えば、障害者の行動を特定の施設、特定のエリアでだけ保障すればいいという、行動を制約するという意味を持つのではないかと感じました。合理的配慮を担保するという意味では、今のバリアフリー法の規制対象自体が差別禁止法によって見直しの議論の対象になるのではないかと思いまし� ��。
また、現在のバリアフリー法では当事者参加の推進ということで、これは1ページの3.にございます。今のところは基本構想を市町村がつくる場合の提案を障害者等から行うことが可能であったり、障害者等のメンバーで協議会を構成する必要がありますが、但しその協議会というのは「できる」規定になっているということです。基本構想についても、先ほど申し上げた移動等円滑化基準の策定に当たってもそうですが、車両内に入ってもよい車いすとか、これは入れることはできないというようなことがあり混在しています。鉄道事業者によっても対応が一律ではなく、異なるという話があるようですから、そうした車両設計等の仕様に当たっても当事者参加が必要になってくるのではないかと感じました。それが差別禁止法に関� ��した発言としてうまく整理できませんが、感想までです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
バリアフリー法というか、こういうハード面を中心とする整備、上からのといいますか、施策的なものと差別禁止法の関わり方、あるいは場合によってはすみ分け、これはどうとらえていくかという非常に大きな問題がここへ出ておるということかと思います。
先ほど、同時にお二人の伊藤委員がおっしゃったようですが、副部会長の方、お願いします。
○伊藤副部会長 ありがとうございます。
確かにこのバリアフリー化はかなり進んできたように思います。きょうの第1コーナーのテーマである差別禁止規定とバリアフリー化基準との関係という点で申し上げますと、私は、今のバリアフリー法による改善、対応ということの問題、この部分だけではないのですけれども、現在のこのバリアフリー化対策とか、これはやはり人が介在することを前提に置いてます。例えば、旅客施設、鉄道駅にしても飛行機にしても、そこに介助者か、もしくは施設提供サイドから人が出るということを前提にした配慮、対応がされている。
差別禁止法のレベルで考えたときに、だれかそこにサポートする人が介在することを前提にして差別が解消されるという視点であってはならないと思いますので、そういう意味で、この公共交通施設だとか建築物だけの問題ではなくて、広い分野にわたって、そこに人が介在しなくても障害当事者が権利を確保できるような配慮が必要ではないか、そこのところに着目したいと思っております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
先ほど、もう一方、お手をお挙げになったように思いましたが。
どうも失礼しました。西村委員、お願いします。
○西村委員 西村です。
基本的には、今まで発言のあった方たちとほとんど同じなんですけれども、基本的な考え方として、権利条約では、他の者との平等を基礎として障害者の生活範囲の制限や制約を改善していく、その考え方の基本がインクルーシブとアクセシビリティーということを原則にするならば、連合の伊藤委員からのお話もありましたけれども、そもそもこのバリアフリー新法の中で、法の対象となる施設が限定されている、範囲が限定をされている、あるいは、さまざまな法の対象となる範囲を限定していることは、他の者との平等と差別禁止との関係から見ると、原則としてはそうではない、さまざまな生活場面において保障されるべきであるということを1つ原則論とするべきなのかと思っています。
ただ、例外規定というのもございまして、合理的配慮、あるいは過度な負担ということから、先ほど東室長の方からのお話の中にもありましたけれども、何をしないことが差別になるのか、何をすることが必要なのかということのすみ分けを、このバリアフリー新法と差別禁止法の規定の中で検討していく方向が必要であると現段階では感じております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、第1コーナーの後半に移らせていただきたいと思います。
後半の35分は、対象とする施設の範囲について、東室長から5分程度で説明をいただいた後、30分程度で質疑、及び議論をいたしたいと思います。
参考資料1を御用意ください。
○東室長 担当室の東です。
まず、この分野の対象範囲をどうするかということであります。
ちなみに、参考資料の1の3ページの上を見ていただくと、そこには「障害者基本法」があります。第21条で、「公共的施設のバリアフリー化」という見出しのもとに、そこでの対象は、「国及び地方公共団体は」というのが主語なのですが、それら「自ら設置する官公庁施設、交通施設(車両、船舶、航空機等の移動施設を含む。事項において同じ。)その他の公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならない」という形で規定されております。
また、参考資料の1ページの方ですが、皆さんも御存じのことだと思いますけれども、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」の中では、「障害のある人が建物その他の施設又は公共交通機関を利用する場合において」云々というくだりがございます。
「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」という中では、ちょっと書きぶりが違っていまして「障害者が不特定かつ多数の者の利用に供されている建物その他の施設又は公共交通機関を利用する場合において」という形で書かれております。
次のページに移りますと、「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例」の中では、該当部分としては「不特定かつ多数の者の利用に供されている建物その他の施設又は公共交通機関を利用する場合において」というような形で範囲が書かれております。これらは一つの参考にはなろうかと思うのです。ですので、先ほど川内委員がおっしゃられた視点なども踏まえて御議論いただければと思っています。
特に、このバリアフリーに関する、最初のハートビル法の時代の議論だったかと記憶をしておりますけれども、「不特定又は多数」にするか「不特定かつ多数」にするかみたいなところで範囲がやはり実際上異なっているというような議論があったように記憶しているのですが、そういった点も念頭に置かれて、差別禁止法における公共施設、公共交通機関といった場合の対処について議論していただければと思っています。
以上です。
○棟居部会長 それでは、質疑及び議論に入らせていただきます。
時間は30分を予定しております。どなたからでもどうぞ。
川内委員、お願いします。
○川内委員 東さんは熊本なので、ちょっとお聞きしますが、熊本の条例の「不特定かつ多数の者の利用に供されている」というのは、先ほどの話だと、学校、事務所、工場、共同住宅というのは、国の立場だと、これは不特定かつ多数ではなくて、多数の者が利用するという解釈になっていますね。ですから、「不特定かつ多数」の熊本の条例では、学校、事務所、工場、共同住宅で拒否が起きても、それはこの条例の関知するところではないということでしょうか。
○東室長 私は制定されるころはこちらにおりましたので、関与しておりません。それはちょっと私の立場では何とも分かりかねるところです。
文字面ではこういうふうに書いてあるということです。
○川内委員 引き続き川内です。
国の解釈によると、不特定かつ多数と、多数の者が利用するというのは大きな違いがあって、ここのところで、学校なんかはそこに所属する子どもの名前も何もわかっているのだから不特定ではないというような言い方をして区切ってきているわけですね。これが、実は先ほど申し上げた差別的な規定の大きな基になっているので、その辺りが、むしろ千葉県の条例の言いぶりの方がまだましかなという感じはしているのです。
以上です。